ハイカイ台湾

台湾うろうろ from 2007

3人のレディ

台湾12回目にして、あの圓山大飯店に泊まってみた。あのバカでかいホテル。あの妙に華やかなホテル。その中にある第一夫人珈琲という名前のカフェで、ファーストレディな気分でひと休みした。注文したフルーツティーを、店員のおばちゃんが席まで運んできてくれた。私は「謝謝」と受け取った。するとおばちゃんは中国語でペラペラと話し始めた。私はキョトンとしつつ最後まで聞いて、妻に「わかった?」とたずねた。おばちゃんはそこで私たちが日本人だと気づいたようで、あちゃ〜!こっちの人やおもてごめんごめん的な素振りで爆笑しながらあやまってきた。

いやいや大丈夫ですよ、それより私の「謝謝」、こっちの人ばりにナチュラルだったでしょ。私は中国語を話せないけれど「謝謝」だけは忘れないようにしているものだから、知らず知らずのうちに発音が磨かれたのかしら。你好と謝謝でなんとかやらせてもろてます(すべて心の中にて)。

おばちゃんは気を取り直し、今度は英語で話し出した。私は英語もできないのだが、セルフサービスだからね、飲み終わった食器はあっちの返却口に戻してね、と伝えたかったようだ。フルーツティーは羅漢果という植物を使った熱羅漢果茶(モンクフルーツティー)。漢方っぽいクセを感じたが甘くておいしかった。なぜかいつまでも熱くて牛歩のように飲み進めたが、量も結構あったので急遽テイクアウトさせてもらった。

 

圓山大飯店の部屋は言うまでもなく豪華だった。引き出しを開けるとワイングラスが入っていて途方に暮れた。アメニティグッズを購入できるというのも私たちには新鮮だった。記念にタオルトレイがほしくてコンシェルジュ(内線1810)に電話したら、スタッフのおばちゃんに歯ブラシ4本を持ってこられた。自分の英語力にびびったが、タオルトレイの実物を見せながら説明したらわかってくれた。おばちゃんは笑っていた。

海外で日本語しか話せないとなると、飲食や買い物をするだけでコミュニケーションはギクシャクしがちだ。でも台湾の各所で出会う人たち、なかでも大体おばちゃんは、その摩擦を楽しんでくれているようだ。相手が外国人だからだろうか。こんな客ばかりだったら面倒だろうな。これが日常だったらお互いに効率を求めるだろう。きっと一度しか出会わないおばちゃんとの触れ合いが、とても贅沢なものに思える。ヒヤヒヤしたりもするが、当たって砕けるのも楽しい。

帰りの桃園国際空港。トイレで手を洗ったあとの私に、洗面台を掃除していたおばちゃんが話しかけてきた。ペーパータオルはここだよ、と。手を拭いたら、ゴミ箱はここだよ、と教えてくれた。ペーパータオルもゴミ箱も埋め込み式で確かにわかりにくかった。私が日本語で「ここかよっ」とつぶやくと、おばちゃんは片言で「ここかよっ」と復唱した。

おわり