6月6日にFIFAワールドカップ26アジア2次予選、台湾対オマーンを観てきた。場所は台北のTAIPEI STADIUM(臺北田徑場)。台湾人の友人にサッカーを観に行くと言うと、「サッカーなんてないやろ?」「どこ対どこ?」「台湾?(チームあるん?)」「こんなでかい缶ビール持ってくんやろ(笑)」と返された。私はビールが好きだし、それを覚えてくれているのはうれしいが、「缶の持ち込みは無理ですわ」と思った。
缶ビール。たしかに、2013年に台湾のトップリーグを観戦したときは、缶ビールを堂々と持ち込んで飲めた。入場は無料で、手荷物検査なんてなかった。観客は20人くらいだったと思う。あれから11年が経ち、しかもFIFA主催試合。缶は無理だろ。そんな常識は通用しなかった。今回チケットこそ有料だが、手荷物検査はなし。席に着くと右斜め前からプシュッと聞き慣れた音が聞こえた。客が缶ビールを開けて飲んだ。左側からもプシュッと聞こえた。缶ビールを両手に持って歩いているやつもいる。なるほど。FIFAうんぬんの前に、ここは台湾ということか。
スタジアムには想像以上に観客が入っていた。すでに台湾の予選敗退が決まっていたにもかかわらず。雨にもかかわらず。ゴール裏の人数は少なかったけれど、メインスタンドとバックスタンドはそこそこ埋まっていた。試合終盤の発表では観客数5,700人。キリのよさがなんか怪しかったけれど、そのくらいはいるように見えた。
台湾代表のユニを着た客もちらほらいた。私も2017年に台北の場末のサッカーショップで買ったユニを着た。欧米系の客も多かった。仕事かなにかの理由で台湾に住んでいるのだろう。台湾のユニを着て、Go Taiwan!とかCome on!とか言って、ジャッジにブーイングしているのはイギリス人だろうか。そいつの小さな息子はアーセナルのユニを着ている。バルセロナやミランのユニを着た人もいた。アルゼンチンっぽいのもいた。ロナウドのもいた。野球っぽいJAPANもいた。台湾が「細かいこと気にしなさんな」と言っている。台湾が「サッカーって祭りやろ」と言っている。
試合は実力で勝るオマーンが攻めた。台湾のファンはメインスタンドもバックスタンドものびのび一喜一憂した。前線にパスが入り、ハーフウェイラインを超えただけでも、こっちが攻める番や!といった感じで歓声が上がった。失点には悲鳴が上がった。バックスタンドでは、どこからともなく手拍子やチャントが発生し、厚みはないが広がった。メインスタンドから太鼓と子どもたちのチャントが聞こえてきた。ゴール裏ももちろん応援していた。Jリーグでも馴染みのあるメロディがいくつかあった。スタジアム全体だとバラバラだったし、ゴール裏がスタンドの応援に合わせてくることもあった。台湾はポストに当たる惜しいシュートも放ったが、0-3で負けた。バックスタンドに選手たちが挨拶に来て、観客は拍手を送る。うなだれる選手たちの中に笑顔で手を振る選手がいて、負けたのに不思議に思えたのだが、そういうのもありな気がした。
おわり